都市力と風土力

建築からの文化論を主に、時事評論を加える。

核兵器の忖度

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日本は国連で、核兵器禁止条約に参加しないと表明した。

僕は安全保障に関しては、理想主義ではなく、現実主義であり、それなりの防衛配慮は必要と考える方だが、被爆国としての魂は売り渡して欲しくなかった。

精神的原則の問題と、現実的戦略の問題を分けて考えることはできないのだろうか。どうも日本は、精神的原則が現実的圧力に負けてしまうような気がする。

森友学園問題に似て、これも「忖度」というものか。

文科省天下りも、忖度の結果だろう。本来悪い意味ではないが、官僚機構がこれで動き、民間がこれに期待するとなれば問題だ。忖度はこの島国の美徳でもあり、悪弊でもある。

スマホ人間学・その2

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ホモ・サピエンスは、ホモ・スマホスに変化しました。

そこで「スマホ人間学会=ホモ・スマホス学会」を設立します。

人類が直面した新しい現象に関する超短い論文をお寄せください。

入会金ゼロ、年会費ゼロ、論文掲載料ゼロ、どこかの学会よりずっとお値打ちで権威があります。もちろんレフリー付き論文にカウントされます。

 

スマホ人間学

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電車の中、プラットホーム、ほとんどの人がスマホを見ている。

覗き込むと、ゲームとメールがほとんど。漫画を読んでいる人もいる。

ゲームは若者、と思いきや、結構中高年の女性もピコピコ。

ネイルの爪で画面が傷つかないかとも思う。

ホモ・サピエンスはホモ・スマホスに変わった。

進化というべきか、退化というべきか。

ラ・ラ・ランドの夢と挫折

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映画「ラ・ラ・ランド」を観た。

少し哀しく大いに楽しい、いい映画だった。

昔あったアメリカン・ミュージカルの夢が蘇った。フレッド・アステアジンジャー・ロジャースジョージ・チャキリスとリタ・モレノ、そしてジュリー・アンドリュース

主題歌の「シティ・オブ・スターズ」が耳に残る。しかしハリウッドという街は好きじゃない。人間の匂いがしない。あれはバーチャルな都市だ。

主演のエマ・ストーンがチャーミングだ。現代アメリカの夢を象徴している。

トランプのアメリカもあれば、エマのアメリカもあるのだ。

若者たちに言いたい。大いに夢を見ろ。そして大いに挫折しろ。

転んだら立ち上がるだけのことだ。

稀勢の里と日本社会ーその2

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稀勢の里が感動の優勝を果たした。日本中が感動した。僕も感動した。

しかしふと、モンゴル出身の力士が敵役になっていることに気がついた。

あれだけ日本を愛し、ついに帰化して日本人となったドナルド・キーン氏が、リオ・オリンピックの報道を観ていて「ファシズムを感じた」と発言したことを想い起こす。

この国は天皇を家長とする情緒的家族主義に一体化しやすい。そして国民はそのことに気づいていない。
もちろん日本人が日本人を応援するのは当たり前だが「日本人とは何か」という問題が残る。国籍もDNAもあてにならない。文化論者として僕は、日本文化を深く理解する人間(日本語を話し、日本社会に溶け込むなら、なおさら)が日本人であると考えたい。

それにしても、稀勢の里照ノ富士も、心配なのは怪我である。

場所中は気が張っているから痛みを感じないが、場所が終わったとたんに動けなくなるという。本人が出ると言っても周りが止めなければいけない。もしそこに大和魂がはたらいたとすれば、そして日本社会と相撲界がそういう雰囲気をつくっているとすれば、「戦力の不足を大和魂でおぎなえ」と言った大本営と同じであろう。

真の大和魂は、異文化に対する寛容と合理的な判断であるべきだ。

変人喚問

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目上の人に「変人ですね」と言って、えらく怒られたことがある。

僕は、褒めたつもりだったが、そうは受け取られなかったようだ。考えてみれば「変人」を尊称と考える方が変人かもしれない。僕は昔から変人に憧れているのだが、なかなかなりきれない自分をダメだなと思っている。

たしかに、周りに迷惑をかける変人は困りものだ。つまり迷惑をかけない変人が「大変人」あり、これが難しいのだ。

そういえば、前に変人と呼ばれた宰相がいた。それなりの業績を残した。

今の宰相は変人とは見えない。しかしその取り巻きには、かなり迷惑をかける変人がいるようだ。本日、証人喚問。

技術屋と財政赤字

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僕の周りには、無骨な技術屋が多く、みな経済には素人である。そしてこの国の巨額の財政赤字を心配している。

ところが金融や経済や財政の専門家の話を聞くと、どうもあまり心配しているようには思えない。

その意見には三種類ある。一つ目は、日本政府は外国ではなく日本人に借金しているのだから大丈夫だ、というもの。江戸時代の武士が商人に借金して大丈夫といっているように聞こえる。しかしこれはまだいい方だ。二つ目は、借金は返さなくてもいい、お金をジャンジャン刷ればいい、というもの。これはかなり怪しい。そうするとインフレになる、「悪貨は良貨を駆逐する」と学校で習ったような気がする。そして三つ目は、そもそも政府の借金は存在しない。すべて財務省の陰謀だ、というもの。これは議論にならない。

僕にはどうしても、金融や経済や財政の専門家より、経済には素人の、無骨な技術屋の方が信用できそうな気がするのだ。

汗水垂らして技術大国を支えてきた人々が置き去りにされ、東芝のようなことが、国家規模で起きるのは悲しい。