都市力と風土力

建築からの文化論を主に、時事評論を加える。

記憶と名前

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NHKの朝のドラマ「ひよっこ」で、沢村一樹が記憶喪失の父親を演じている。

子供のころ、記憶を喪失することは怖いなと思ったのだが、不思議だったのは、映画やドラマに登場する主人公が、自分の名前や家族や職業は覚えていないのに、話はできるのだ。つまり一般日常の言葉は記憶しているのである。インチキだと思ったが、だんだん、記憶喪失とはそういうものだということが分かってきた。

人間にとって自分の名前や家族や職業は重要ではないのだろうか。

そうではない。人間の記憶は「層」をなしていて、人、男、女などが深層にあり、怖い、優しい、大きい、小さい、などが中層にあり、個人名は表層にあるのだろう。また人、男、女などは先天的なものだが、名前、家族、友人などは変化することもあり、そういう記憶は失いやすいのだろう。また自己と社会の関係に関する記憶も失いやすい。

つまり人間の脳は、自分にとって重要かどうかよりも、動物としての進化発達の過程によって層を構成していることが感じられる。

自然に生きるということは、通常重要だと考えている、自己と社会との関係を捨てて生きることかもしれない。

安倍政権とチルドレンと国益

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豊田、稲田、今井、「安倍チルドレン」と呼ばれる女性政治家の問題が続き、国会も、マスコミも、本人までが、子供の不始末は親の責任だといっている。

森友、加計の問題と合わせ、お友達と子供達が政権という「家」を崩壊させかねないのだ。

何人か外国人の意見を聞いてみた。

ヨーロッパもアメリカもアジアもアフリカも、国家の存続を揺るがすような問題で揺れ動いているのだが、日本だけが安定的な体制でうらやましかった。それなのに、このような問題で政権が揺らぎ、結果として国益を失うのは、いかにも日本らしい、ということだ。

やはりこの島国は平和ボケなのだろうか。いや、そうではない。実は平和でも何でもないのだ。国家は常に危機にさらされている。お友達と子供達によって政権が揺らぐ、戦後国家という「家」のあり方が問題なのだ。

ここは国益を第一に考える必要があるような気がする。

生命回帰の建築ー伊東豊雄

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青山通りから、明治神宮に向かって、表参道を歩く。

欅並木の葉を揺らす夏の風が心地よく、歩道が広いので自動車の騒音や排気ガスを感じさせない。

浅草の仲見世が下町の参道なら、こちらは山の手の参道。東京が誇る新旧二つの参道として対照的だ。仲見世が、江戸時代の長屋のように一つの建築に土産物屋が並び入っているのに対して、表参道は、世界のファッション・ブランドがそれぞれ個性のある現代建築家に設計を依頼した店舗が建ち並んでいる。

丹下健三黒川紀章安藤忠雄伊東豊雄妹島和世隈研吾、その他外国人も含めて、世界的な建築家の作品が目白押し。こんな通りは世界にも稀である。ショッピング・ストリートとして、シャンゼリゼー(パリ)や五番街(ニューヨーク)に匹敵するのは長いあいだ銀座であったが、今では表参道というべきだろう。知名度ではまだ一歩譲るものの、建築と並木と心地よさに関しては、すでに表参道が、シャンゼリゼーも五番街も凌駕している。

「THE・PAGE」の連載、今回は伊東豊雄さんのトッズを取り上げました。

https://thepage.jp/detail/20170710-00000006-wordleaf

藤井聡太の格闘技

https://thepage.jp/detail/20170703-00000005-wordleaf

天才少年が、「ひふみん」というタレントを生んだところが面白い。

これを機会に、格闘技としての将棋の文化論を書きました。チェスや囲碁についても書いてます。

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安倍政権の代理戦争・その2

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都議選である。

豊洲が争点かと思われたが、森友加計問題、閣僚、議員の不祥事など、安倍政権の審判のようになってきた。

さながら代理戦争。今までの地方議会の選挙からは考えられないようなヒートアップだ。

マスコミが、親安倍派、反安倍派と二分されているのも珍しいこと。日頃は中間派と思われていた、比較的穏当な意見の人まで旗幟鮮明になっている。その点でも代理戦争。

日本社会がこれだけ政治的に分かれているのは、60年安保以来ではないか。

その点で、安倍総理は祖父の道を行っている。

 

安倍政権の振り子

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「THE・PAGE」に「安倍政権のやまとごころ」という記事を書いた。

一種の政治文化論である。

書いているときは、かなり批判色が濃いと感じていた。しかし金曜日の夕方にアップされ、次の土、日のテレビ番組は、政権批判一色だった。月曜日の段階では、記事の批判は生ぬるく感じられた。

政局の変化は速い。

支持率が高かっただけに下がるのも劇的だ。

政治的方向はまったく異なるが、田中角栄の人気が一挙に下がったことを思い起こした。

国論の振り子は大きく振れる。