都市力と風土力

建築からの文化論を主に、時事評論を加える。

マティス国防長官の頼もしさ

獰猛いや勇猛で知られる海兵隊出身。湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争と、激戦地を戦い抜き、失った部下の家族をすべて訪問し、圧倒的な信頼と人望がある。膨大な戦史と哲学の本を読み、深い知識がある。日本にも勤務し、同盟国である日本の国旗が紛失し…

坊ちゃんと不良・日米首脳会談

あるテレビ番組(日曜日の朝のフジテレビ)で「安倍首相はお坊ちゃんだが、不良と付き合うのがうまい」という発言があった。 なかなか巧みな表現だ。 たしかに安倍総理は、祖父も総理大臣、父も総理候補の政治家、妻は大企業のお嬢さんという、お坊ちゃんで…

野生社会と管理社会

小池百合子ブームの前は田中角栄ブームであった。 これとトランプ現象との関連はあるだろうか。もちろん彼が大統領になる前だが、先進社会が豪腕のリーダーを求める傾向とは関連があるだろう。 トランプ、プーチン、サルコジ、ベルルスコーニといった面々は…

ラスコーの空間秩序

ラスコーの洞窟壁画の展示を見に行った。 細長い洞窟の中に、馬、鹿、牛など、身近な動物たちがダイナミックなパノラマとなって展開される。もちろん写真のような写実性ではなく、ある特徴を誇張する筆法だが、生き生きとした動きをとらえる描写力に感心せざ…

都市化の暴力

『西部戦線異常なし』という映画は、ドイツの若い志願兵が戦死するまでの、塹壕線における恐怖と苦悩を描いている。 第一次世界大戦においては、歩兵が機関銃の弾幕から隠れる必要があり、塹壕戦とならざるをえない。ナポレオン戦争のような勇壮な歩兵戦、騎…

戦争と「都市力・風土力」

前に、ベトナム戦争で、アメリカはベトナムの「風土」に負けたと書いた。 歴史を振り返ってみると、これに似たことは何回か起きている。 ナポレオンとヒトラーがロシアで失敗したのは、ともに「冬将軍」すなわち厳しい吹雪による。 ナポレオンとその同盟軍は…

言葉と後悔 双子の兄弟

言葉というやつは、頭の中にあるうちは、ぼんやりとして、形も定まらず、現れたり消えたり、きわめて頼りない存在だ。だから建築設計のエスキスのように、描いたり消したり、ああでもないこうでもないと、くんずほぐれつするうちに、少しずつ形になっていく…

政治的性格 A面=都市力 B面=風土力

トランプ現象と政治的性格について論じてきた。重なる部分もあるが、整理しよう。 人間は、他の生物と同様に群をなし、社会的動物でもあり、政治的動物でもある。 人間の集団は、複層的かつ可変的である。集団の最小単位は個人であり、最大単位は人類と考え…

この世界の片隅に

「この世界の片隅に」というアニメーション映画を観た。 素晴らしい作品だ。 戦争や原爆を、庶民の目線で、人生の流れと生活の日常から現象させることによって、その理不尽を描く。それはままあることだが、この作品は、庶民目線が徹底しており、ごく普通の…

大統領就任演説=ポピュリズムよりエゴイズム

トランプ大統領の就任演説は、よく言われるアメリカ主義なのだが、人間とか国家とかの「理念」がまったく感じられないことに少し驚いた。ここまで来ると、ポピュリズムというよりエゴイズムではないか。これでは説得力がないだろう。 人間にも国家にも、政治…

建築家の資質

建築家に必要な資質は何かと問われれば「少しトンがった真心」と答える。 つくることに対する真心であり、それが世間に多少の摩擦を生じる角となる。 あまりもち合わせない有名建築家もいるし、十分にもつ無名の建築家もいる。 真心が無ければ、つくるものに…

文科省と大学・知的腐食

文科省の組織的な天下りが問題になっている。 天下り先は大学である。 国立大学が法人化されてから、大学に対する文科省の力が驚くほど強くなった。そして教授や学部長や学長までが文科省から送られて来る。予算を獲得するために、大学もそれを受け入れる。 …

稀勢の里と日本社会

稀勢の里が優勝したことを日本中が喜んでいる。 本人のインタビューも涙、涙、「ホントに周りが支えてくれました、これからもホントに稽古に励んで、ホントに立派に勤めます」 周囲から精神的な弱さがあると言われ、本人もそれを認めているようだ。 若乃花以…

トランプ現象とアメリカの風土=荒野

大統領就任式を控え、マス・メディアはトランプの人間性と閣僚と政策の分析に忙しい。 しかしそれは徐々に明らかになることだ。それよりもこのトランプ現象が、アメリカを二分している事実について考えたい。 グローバリズムとアメリカニズム(国家第一とい…

壁の文化と屋根の文化

先に「積み上げる文化と組み立てる文化」について書いた。 建築からの文化論としては、分かりやすいキャッチフレーズであったが、「建築へ向かう旅」という本の中で、もう一つ踏み込んでみた。 積み上げる建築は「壁」の建築であり、組み立てる建築は「屋根…

本はページをめくるだけでいい

難しい本、面白くない本、やたらに厚い本など、途中でストップしてしまうことがある。 そのままにしておくと、本に負けたような気になるし、次の本に進みにくい。そういう本は、とにかくページをめくってしまうといい。内容が頭に入らなくても、目が何らかの…

本は後ろから読め

時々、本を後ろから読む。 やってみた人間でないと分からないが、それも一つの読書なのだ。 パラパラと後ろからページをめくる。精読はできないから、スピードが早い。しかも不思議にその本に書いてあることの構造が理解できる。そして重要なところだけ、し…

積み上げる文化・組み立てる文化

四年生のときに大学は紛争となり、バリケード封鎖の中の卒業。そのまま大学院に進んだのだが、設計と研究とどちらの道に進むべきかで大いに迷い、迷いながら哲学や評論を読んだ。すでに両親は亡く姉たちは嫁に行って天涯孤独。 紛争のあとの虚脱感もあったの…

可愛いAI

先に、AIに関する論評が、打ち壊し運動とアシモフの時代の域を出ていないと書いた。 乱数発生と自己学習が生み出す、これまでのプログラムとの違いの本質に触れていないからだ。 乱数発生は、プログラムに偶然を取り込むことであり、これは創造力と想像力に…

政治的性格とは

トランプ現象から、「政治的性格のA面とB面」を語ってきた。 この政治的性格という言葉は、デビッド・リースマンが「孤独な群衆」において使った「社会的性格」に習ったものだ。 リースマンは、経済的テイクオフ(離陸すなわち急速な発展)以前の社会では、…

AI(人工知能)の論評

AI(人工知能)について、様々に論じられているが、もう一つピンとこない。 AIには、人間のような想像力も創造力もない、所詮人間がプログラムしたものだから人間を超えられない、といった意見によって、安心しようとする内容がほとんどだ。 かつて、機械が…

トランプ現象は三極構造

トランプ現象と、インターネットあるいはSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)との関係は、あまり論じられていない。 ロシアがハッキングによって、クリントンのメールを流出させたという報道があるが、これは少し種類が異なる問題だ。 かつて、ケ…

ベトナム戦争と風土力

僕の青春時代は、ベトナム戦争の期間とほぼ同時期であった。 われわれの政治意識の背景には常に、日本の物質的繁栄とベトナムの惨劇が存在したのだ。あの大学紛争というものも、この戦争と密接につながっていた。 第一次世界大戦以来、最大の軍事強国として…

智に働けば角が立つ=深知

智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。 ご存知「草枕」の冒頭、漱石をあまり読まない人でもこの言葉は知っている。人間とその社会を考える上で、やはり名言だと思われる。 これまで政治的性格のA面とB面について書いてきたが、A面はこの「智」に、B面…

スポーツ資本主義=情動資本主義

先に、体育会系は下火と書いたが、スポーツが衰退したわけではない。逆に大いに盛り上がっている。 国際的に見て、サッカー、野球、フットボール(アメフト)、バスケットボール、テニスなどは、大きな集客力と資金力を有し、コマーシャリズム(消費宣伝)と…

体育会系とアマチュア・スポーツ

先のブログで、トランプやプーチンといった政治家(すなわちB面の)を「体育会系」という言葉で表現した。 現在、特定の人気スポーツ(例えばプロになって稼げるような)を除けば、体育会系は下火である。 友人たちが集まって話をすると、それぞれの部活動の…

世界情勢と風土

シリア情勢は混乱終息に向かっているのだろうか。 熱砂の中、黒覆面をした男が、オレンジ色の服を着せられ後ろ手に縛られて座らされた日本人ジャーナリストの首に、キラキラと光るナイフを突きつける映像は、平和慣れした日本人にとって、忘れがたい記憶とな…

トランプ現象はポピュリズムか

欧米でも日本でも、既成のマスメディアは、トランプ氏の勝利と、ヨーロッパの右翼政党の伸長を「ポピュリズム」と位置づけているようだ。 しかし現代のマスコミが、民主主義社会の選挙結果に対してこの言葉を使うことには違和感がある。どうもそのまま素直に…

体育会系の政治家

トランプやプーチンやドゥテルテといった指導者の傾向を、右派、ポピュリズムといった一言で表現するのを避け、とりあえず価値判断を控えて、これを政治的性格のB面とした。 今、ひとつ僕の頭の中にあるのは「体育会系」という言葉である。 高度成長のあと、…

演歌の風土力

よく巷で歌われる「演歌」というものの歌詞を分析したことがある。 そこに登場する地域と都市には、はっきりした偏りがあるのだ。「北」をタイトルとする歌は多く、「南」の歌はほとんど見当たらない。「北へ行く」あるいは「北から来る」という設定で、その…

本と旅

本を読むのは良いことだ。 旅に出るのも良いことだ。 本は内的な旅であり、旅は外的な読書である。 しかしよく考えてみると、こうも言える。 本は、他の人の心に触れるつまり外的な心の旅であり、旅は、自分を発見するつまり内的な心の読書である。

少年の孤独と老人の孤独

少年は孤独だ。 老人も孤独だ。 少年の孤独は老人の孤独より苦しい。 老人の孤独は少年の孤独より哀しい。 少年の孤独には希望があるから。 老人の孤独には記憶があるから。

もっとシンプルに

年金制度が変わるそうだ。健康保険も変わるそうだ。 自分にも関わることだが、理解するのが面倒である。 さまざまな減免制度があるので、税務署は還付手続きが大変だそうだ。一度集めたお金をまた返すのに相当のコスト(公務員の人件費)がかかっている。財…

トランプとメルケル

ドイツのメルケル首相は、トランプ次期大統領の当選を受けて「民主主義、自由、そして出自、肌の色、宗教、性別、性的指向、政治的立場に左右されず、個々人の権威と尊厳に敬意を払うという諸価値の基礎の上で、協力したい」と述べたという。 他国の首脳が、…

トランプとクリント・イーストウッド

米大統領選の終盤、俳優のメリル・ストリーブが、クリント・イーストウッドがトランプ氏を支持していることに対して「私が(支持を取り下げるよう)説得する」と発言したと伝えられた。 面白い話だ。 どちらも傑出した映画人である。 メリルは、「クレイマー…

打撃コーチを見抜く神様

王貞治選手の一本足打法を生んだ荒川博コーチが他界した。 懐かしい名前である。単なる打撃コーチとして、これほど有名になった方も珍しいだろう。 川上哲治氏が監督になった時に懇請したという。 一見、読み過ごしてしまうが、川上といえば、僕らが子どもの…

相手国民の心に響く外交

安倍首相が真珠湾を慰霊訪問するという。 この15日に日露首脳会談が予定されているから「返す刀で」という感がある。この行動力は評価したい。 吉田首相のサンフランシスコ平和条約、田中首相の日中平和友好条約、中曽根首相の国鉄民営化、小泉首相の郵政…

ニュースサイト連載

最近、ヤフーが運営するニュースサイト「ザ・ページ」に「都市化の残像」というタイトルで、連載を始めたので、そちらに力を取られ、ブログ更新回数が減っている。 具体的な建築から文化と社会を論じたもので、そちらも是非読んでいただきたい。 「都市力と…

トランプ現象と政治的性格の二面性

日本のマスコミは、アメリカのメディアに追従してクリントン氏勝利を予測し見事に裏切られた。選挙中はトランプ氏の主張がいかに無茶苦茶であるかを報じていたが、選挙後は打って変わって、彼の現実主義を報じている。 僕も彼の勝利には驚いた。しかし勝って…

立場の重圧

責任ある立場というものは、やりがいもあるが、重圧もある。 いつでも辞められるなら気が楽だ。企業経営者や政治家には、大まかな任期というものがある。 絶対に辞められないとなると、これは苦痛だ。天皇退位には反対の識者が多いという。 辞めると命の危険…

空を切る

真理、真実を書こうと、もがいていたのだが、それは言葉にできないものなのかもしれない。 星の王子様は「本当に大切なものは目に見えない」と言った。同じことだろう。本当に大切なことは、言葉では表現できないのだ。 本質を切ろうとすればするほど空を切…

カストロ・20世紀の英雄

フィデロ・カストロが死んだ。 アメリカとの国交正常化の後であった。 生き延びた英雄であり、生き延びた20世紀人でもある。 キューバ人は哀しみ、アメリカの亡命キューバ人は喜んだ。 一般に、革命のヒーローは政権の座に着くと、それまでの盟友を裏切り…

町内会長型と創業者型

プーチンは、選挙を経ているにせよ、強大な権限をもつ無期限の大統領という印象だ。 ソビエトが崩壊し、民主主義のロシアが誕生してから、独裁者が誕生したのである。 一般的には、選挙によってリーダーを選ぶ民主主義は、独裁者の出現を封じる機能をもつは…

小説

小説というものは、読み手によって、またその時期によって、ずいぶんと「意味」が変わるような気がする。だから、評判のものを読んであまり感動しなくても恥じることはないし、逆に感動したものが評判にならなくても寂しく思うこともない。すぐれて個人的な…

ボブ・ディランは素直だ

ボブ・ディランにノーベル文学賞と聞いて驚いた。 しかし連絡が取れず「受賞拒否か」という報道に、さすが「らしいな」と思っていた。 ところが「とても嬉しい。喜んでいる」とのコメントが出て、「なあんだ普通の人か」と思った。 しかしスケジュールが決ま…

拓郎と直太朗

ノーベル賞はもらえないだろうが、吉田拓郎はいい。 あの時代特有の、主張と、迷いと、諦念がある。 妙にプロテストする歌も、甘い恋愛歌も、甲高い声の気取った歌も、好みに合わない。 拓郎には独特の風物詩がある。そう言えば季節を感じさせる歌が多い。強…

ドナルド勝利は知識人の敗北か

米大統領選にドナルド氏が勝利して、あるテレビのコメンテイターから「自分も含めて知識人の敗北である」という発言が聞かれた。 たしかにこれまで、トランプ氏は、無知と言われ、ホラ吹きと言われ、大衆迎合と言われ、その支持者は、白人の労働者、貧困層、…

TPPと国内紛争国際紛争

「TPPをまとめようとしたとき、アメリカの言いなりになるなと野党に批判された。今度は、アメリカの大統領候補が両方とも反対しているのになぜ日本がと批判される」官房長官は言う。 だからこそ日本がリーダーシップを取るべきだと続けた。 このことは、一国…

マナーが変化

レストランに入って隣の席が近いと、話し声が耳に着く。夢中になって大声で喋る迷惑な人たちもいる。 一方、仕事の打合せなどでコーヒー店にはいっても、周りがシーンとして話ができる雰囲気ではない。図書館に入ったのかと勘違いする。 かつて、喫茶店でよ…

文明は発達、文化は。

韓国の大統領スキャンダルに関する報道は、怒号と罵声、なかなかに激しい。 歴代大統領が就任中または辞任後に親族の汚職などで訴追されているので、「やっぱりこの人もか」という感を拭えない。 一方、中国の総書記は「核心」という言葉で独裁体制を固めて…