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都市力と風土力

建築からの文化論を主に、時事評論を加える。

本はページをめくるだけでいい

難しい本、面白くない本、やたらに厚い本など、途中でストップしてしまうことがある。 そのままにしておくと、本に負けたような気になるし、次の本に進みにくい。そういう本は、とにかくページをめくってしまうといい。内容が頭に入らなくても、目が何らかの…

本は後ろから読め

時々、本を後ろから読む。 やってみた人間でないと分からないが、それも一つの読書なのだ。 パラパラと後ろからページをめくる。精読はできないから、スピードが早い。しかも不思議にその本に書いてあることの構造が理解できる。そして重要なところだけ、し…

積み上げる文化・組み立てる文化

四年生のときに大学は紛争となり、バリケード封鎖の中の卒業。そのまま大学院に進んだのだが、設計と研究とどちらの道に進むべきかで大いに迷い、迷いながら哲学や評論を読んだ。すでに両親は亡く姉たちは嫁に行って天涯孤独。 紛争のあとの虚脱感もあったの…

可愛いAI

先に、AIに関する論評が、打ち壊し運動とアシモフの時代の域を出ていないと書いた。 乱数発生と自己学習が生み出す、これまでのプログラムとの違いの本質に触れていないからだ。 乱数発生は、プログラムに偶然を取り込むことであり、これは創造力と想像力に…

政治的性格とは

トランプ現象から、「政治的性格のA面とB面」を語ってきた。 この政治的性格という言葉は、デビッド・リースマンが「孤独な群衆」において使った「社会的性格」に習ったものだ。 リースマンは、経済的テイクオフ(離陸すなわち急速な発展)以前の社会では、…

AI(人工知能)の論評

AI(人工知能)について、様々に論じられているが、もう一つピンとこない。 AIには、人間のような想像力も創造力もない、所詮人間がプログラムしたものだから人間を超えられない、といった意見によって、安心しようとする内容がほとんどだ。 かつて、機械が…

トランプ現象は三極構造

トランプ現象と、インターネットあるいはSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)との関係は、あまり論じられていない。 ロシアがハッキングによって、クリントンのメールを流出させたという報道があるが、これは少し種類が異なる問題だ。 かつて、ケ…

ベトナム戦争と風土力

僕の青春時代は、ベトナム戦争の期間とほぼ同時期であった。 われわれの政治意識の背景には常に、日本の物質的繁栄とベトナムの惨劇が存在したのだ。あの大学紛争というものも、この戦争と密接につながっていた。 第一次世界大戦以来、最大の軍事強国として…

智に働けば角が立つ=深知

智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。 ご存知「草枕」の冒頭、漱石をあまり読まない人でもこの言葉は知っている。人間とその社会を考える上で、やはり名言だと思われる。 これまで政治的性格のA面とB面について書いてきたが、A面はこの「智」に、B面…

スポーツ資本主義=情動資本主義

先に、体育会系は下火と書いたが、スポーツが衰退したわけではない。逆に大いに盛り上がっている。 国際的に見て、サッカー、野球、フットボール(アメフト)、バスケットボール、テニスなどは、大きな集客力と資金力を有し、コマーシャリズム(消費宣伝)と…

体育会系とアマチュア・スポーツ

先のブログで、トランプやプーチンといった政治家(すなわちB面の)を「体育会系」という言葉で表現した。 現在、特定の人気スポーツ(例えばプロになって稼げるような)を除けば、体育会系は下火である。 友人たちが集まって話をすると、それぞれの部活動の…

世界情勢と風土

シリア情勢は混乱終息に向かっているのだろうか。 熱砂の中、黒覆面をした男が、オレンジ色の服を着せられ後ろ手に縛られて座らされた日本人ジャーナリストの首に、キラキラと光るナイフを突きつける映像は、平和慣れした日本人にとって、忘れがたい記憶とな…

トランプ現象はポピュリズムか

欧米でも日本でも、既成のマスメディアは、トランプ氏の勝利と、ヨーロッパの右翼政党の伸長を「ポピュリズム」と位置づけているようだ。 しかし現代のマスコミが、民主主義社会の選挙結果に対してこの言葉を使うことには違和感がある。どうもそのまま素直に…

体育会系の政治家

トランプやプーチンやドゥテルテといった指導者の傾向を、右派、ポピュリズムといった一言で表現するのを避け、とりあえず価値判断を控えて、これを政治的性格のB面とした。 今、ひとつ僕の頭の中にあるのは「体育会系」という言葉である。 高度成長のあと、…

演歌の風土力

よく巷で歌われる「演歌」というものの歌詞を分析したことがある。 そこに登場する地域と都市には、はっきりした偏りがあるのだ。「北」をタイトルとする歌は多く、「南」の歌はほとんど見当たらない。「北へ行く」あるいは「北から来る」という設定で、その…

本と旅

本を読むのは良いことだ。 旅に出るのも良いことだ。 本は内的な旅であり、旅は外的な読書である。 しかしよく考えてみると、こうも言える。 本は、他の人の心に触れるつまり外的な心の旅であり、旅は、自分を発見するつまり内的な心の読書である。

少年の孤独と老人の孤独

少年は孤独だ。 老人も孤独だ。 少年の孤独は老人の孤独より苦しい。 老人の孤独は少年の孤独より哀しい。 少年の孤独には希望があるから。 老人の孤独には記憶があるから。

もっとシンプルに

年金制度が変わるそうだ。健康保険も変わるそうだ。 自分にも関わることだが、理解するのが面倒である。 さまざまな減免制度があるので、税務署は還付手続きが大変だそうだ。一度集めたお金をまた返すのに相当のコスト(公務員の人件費)がかかっている。財…

トランプとメルケル

ドイツのメルケル首相は、トランプ次期大統領の当選を受けて「民主主義、自由、そして出自、肌の色、宗教、性別、性的指向、政治的立場に左右されず、個々人の権威と尊厳に敬意を払うという諸価値の基礎の上で、協力したい」と述べたという。 他国の首脳が、…

トランプとクリント・イーストウッド

米大統領選の終盤、俳優のメリル・ストリーブが、クリント・イーストウッドがトランプ氏を支持していることに対して「私が(支持を取り下げるよう)説得する」と発言したと伝えられた。 面白い話だ。 どちらも傑出した映画人である。 メリルは、「クレイマー…

打撃コーチを見抜く神様

王貞治選手の一本足打法を生んだ荒川博コーチが他界した。 懐かしい名前である。単なる打撃コーチとして、これほど有名になった方も珍しいだろう。 川上哲治氏が監督になった時に懇請したという。 一見、読み過ごしてしまうが、川上といえば、僕らが子どもの…

相手国民の心に響く外交

安倍首相が真珠湾を慰霊訪問するという。 この15日に日露首脳会談が予定されているから「返す刀で」という感がある。この行動力は評価したい。 吉田首相のサンフランシスコ平和条約、田中首相の日中平和友好条約、中曽根首相の国鉄民営化、小泉首相の郵政…

ニュースサイト連載

最近、ヤフーが運営するニュースサイト「ザ・ページ」に「都市化の残像」というタイトルで、連載を始めたので、そちらに力を取られ、ブログ更新回数が減っている。 具体的な建築から文化と社会を論じたもので、そちらも是非読んでいただきたい。 「都市力と…

トランプ現象と政治的性格の二面性

日本のマスコミは、アメリカのメディアに追従してクリントン氏勝利を予測し見事に裏切られた。選挙中はトランプ氏の主張がいかに無茶苦茶であるかを報じていたが、選挙後は打って変わって、彼の現実主義を報じている。 僕も彼の勝利には驚いた。しかし勝って…

立場の重圧

責任ある立場というものは、やりがいもあるが、重圧もある。 いつでも辞められるなら気が楽だ。企業経営者や政治家には、大まかな任期というものがある。 絶対に辞められないとなると、これは苦痛だ。天皇退位には反対の識者が多いという。 辞めると命の危険…

空を切る

真理、真実を書こうと、もがいていたのだが、それは言葉にできないものなのかもしれない。 星の王子様は「本当に大切なものは目に見えない」と言った。同じことだろう。本当に大切なことは、言葉では表現できないのだ。 本質を切ろうとすればするほど空を切…

カストロ・20世紀の英雄

フィデロ・カストロが死んだ。 アメリカとの国交正常化の後であった。 生き延びた英雄であり、生き延びた20世紀人でもある。 キューバ人は哀しみ、アメリカの亡命キューバ人は喜んだ。 一般に、革命のヒーローは政権の座に着くと、それまでの盟友を裏切り…

町内会長型と創業者型

プーチンは、選挙を経ているにせよ、強大な権限をもつ無期限の大統領という印象だ。 ソビエトが崩壊し、民主主義のロシアが誕生してから、独裁者が誕生したのである。 一般的には、選挙によってリーダーを選ぶ民主主義は、独裁者の出現を封じる機能をもつは…

小説

小説というものは、読み手によって、またその時期によって、ずいぶんと「意味」が変わるような気がする。だから、評判のものを読んであまり感動しなくても恥じることはないし、逆に感動したものが評判にならなくても寂しく思うこともない。すぐれて個人的な…

ボブ・ディランは素直だ

ボブ・ディランにノーベル文学賞と聞いて驚いた。 しかし連絡が取れず「受賞拒否か」という報道に、さすが「らしいな」と思っていた。 ところが「とても嬉しい。喜んでいる」とのコメントが出て、「なあんだ普通の人か」と思った。 しかしスケジュールが決ま…

拓郎と直太朗

ノーベル賞はもらえないだろうが、吉田拓郎はいい。 あの時代特有の、主張と、迷いと、諦念がある。 妙にプロテストする歌も、甘い恋愛歌も、甲高い声の気取った歌も、好みに合わない。 拓郎には独特の風物詩がある。そう言えば季節を感じさせる歌が多い。強…

ドナルド勝利は知識人の敗北か

米大統領選にドナルド氏が勝利して、あるテレビのコメンテイターから「自分も含めて知識人の敗北である」という発言が聞かれた。 たしかにこれまで、トランプ氏は、無知と言われ、ホラ吹きと言われ、大衆迎合と言われ、その支持者は、白人の労働者、貧困層、…

TPPと国内紛争国際紛争

「TPPをまとめようとしたとき、アメリカの言いなりになるなと野党に批判された。今度は、アメリカの大統領候補が両方とも反対しているのになぜ日本がと批判される」官房長官は言う。 だからこそ日本がリーダーシップを取るべきだと続けた。 このことは、一国…

マナーが変化

レストランに入って隣の席が近いと、話し声が耳に着く。夢中になって大声で喋る迷惑な人たちもいる。 一方、仕事の打合せなどでコーヒー店にはいっても、周りがシーンとして話ができる雰囲気ではない。図書館に入ったのかと勘違いする。 かつて、喫茶店でよ…

文明は発達、文化は。

韓国の大統領スキャンダルに関する報道は、怒号と罵声、なかなかに激しい。 歴代大統領が就任中または辞任後に親族の汚職などで訴追されているので、「やっぱりこの人もか」という感を拭えない。 一方、中国の総書記は「核心」という言葉で独裁体制を固めて…

風土力の歌集

設計事務所から大学に転じて、何か新しい分野を開拓しようと「文学の中に記述された建築」という研究に取り組んだ。当時流行していた心理実験やアンケートによって建築の意味を探ろうとする研究に疑問をもったからだ。建築の意味は、そういった手法で浮かび…

日本の都市力と風土力

英語の「civilization(シビライゼーション)」は、本来「都市化」を意味する。 これを「文明」と訳したのは、ヨーロッパと日本との、都市の現実が違いすぎたからではないか。大陸では、都市は城壁に囲まれ、石や煉瓦を積み上げた大きな共同体であるが、日本…

平将門と平和復興五輪

ある先輩との酒の上での会話。「猪瀬知事、舛添知事の失脚、新国立競技場の設計やり直し、エンブレムの盗用、与党ではない知事の圧勝、豊洲問題、その他競技場の見直しと・・・直接にも間接にも、このオリンピックには問題がつづきますね」「これだけ続くと…

10月3日

先日、あるドイツ人と話していて、10月3日が、再統一の日としてドイツ最大の記念日となっていることを知った。 アメリカは7月4日、独立記念日である。 フランスは7月14日、革命記念日であり、パリ祭である。 「日本は?」と聞かれ、はて・・・。 2…

ボブ・ディランにノーベル文学賞

「えっ! 文学賞に?・・・ふーん、まあ、なるほどそれもありか」 村上春樹の「風の歌を聴け」にも、ボブ・ディランの「風に吹かれて」の影響はあると思う。どちらも名作だ。 よくデビュー作を超えるのは難しいと言うけど、時代の風が吹いていたのだろう。イ…

アスリートファースト?

僕はスポーツ・ファンだ。 バラエティやらクイズやらはあまり面白くないし、ドラマも嘘っぽい。報道番組さえ信用できないところがある。スポーツには嘘がない。選手たちの努力とファインプレーには文句なく拍手を送りたい。国民の気持ちは、オリンピック・パ…

ノーベル賞と知的崩壊

母校の教授がノーベル賞を受賞、まずはめでたい。 すぐに役立つ研究に資金がまわり、基礎研究がおろそかになって、科学の空洞化が起きているという発言、そのとおりだと思う。 先日、昼食の席上、ある若い科学者と意見が一致した。 「最近の科学研究は、膨大…

地方議会の縮減

ある市役所を設計しているとき、市の担当者から「議会関係のところはどんなに立派につくっても文句が出ませんよ」と言われた。なるほどそのとおりだった。 文化施設の設計で議会説明に同席したこともあり、その後も色々と地方行政に携わってきた。 地方議員…

豊洲とオリンピック

豊洲の問題は、技術的なディテールがハッキリしないと何とも言えないが、コンクリート工学の専門家、特に遮蔽性の権威である知人は「危険性が明確にならないうちにマスコミが騒ぎすぎている」と言う。僕もそう思う。 新国立競技場以来の一連の問題の根底には…

アーノルド・パーマー追悼

あの頃、かの国の芝生は輝いて見えた。 今、二人の大統領候補は輝きを失っている。T氏は「まさか」。C氏は「またか」。 国内は、爆発(テロ?)と抗議(暴動?)。 わが国の、A氏とR氏は、輝いているか。 内憂外患。

相撲という文化

特に好きというわけでもないが、放送があるときは、相撲をつけている。 父が好きだったので、あの色のついた房の下がる神社のような屋根の下、土俵の上の力士たちの光景がテレビ画面に映ると、早死にした父を思い出すのだ。昔から変わらない画面であり、画面…

「シン・ゴジラ」と日本社会・その3−福島との関係

映画「シン・ゴジラ」は、東日本大震災に触れていない。 しかしこの映画に、3・11の地震による津波被害と福島原発が、大いに関わっていることを感じないわけにはいかない。むしろゴジラを使って、3・11を映画化したとさえ言える。 初期のゴジラが呑川…

「シン・ゴジラ」と日本社会・その2ーアメリカとの関係

映画「シン・ゴジラ」には、日本政府と米国との関係が強く現れる。 国家の危機であるから、日米安保を考えれば当然のことだろう。 しかしそこには伏線があるようだ。 2014年のハリウッド映画「GODZILLAゴジラ」である。見終わってイヤな感じが残った。最後に…

「シン・ゴジラ」と日本社会・その1ー崩壊のリアリティ

映画「シン・ゴジラ」を観た。 とても面白かった。 ゴジラを中心とするこれまでの怪獣映画、ハリウッド製の地球危機映画などとはまったく異なるリアリティがある。 これまでは激烈な都市破壊の恐怖感と、危機を救う主人公の英雄的行為に焦点が当てられていた…

熊野の霊力

夏の盛りに、熊野古道を歩いた。 まことに山深い土地だ。巨木の森の中、土と石と苔の匂いに霊力を感じる。 三つの大社に参詣した。もとは修験の地であったが、やがて神仏習合となった。 それにしても平安末期、都の貴族たちの熊野詣は頻繁であった。後白河法…