「都市力と風土力」というのは、このところ考え続けているテーマである。
次のような趣旨。
北極圏のイヌイット(エスキモー)は氷の家に住む。
赤道に近い熱帯雨林の人々は草を編んだ家に住む。
中央アジアの草原の民はテントの家に住む。
ヨーロッパでは煉瓦を積み上げた家に、日本では木を組み立てた家に住む。
人はそれぞれの風土に応じた家に住み、それぞれの文化を育てるのだ。
人間は風土に生きる。
家や都市は、人間だけのものではない。
鳥やビーバーも家をつくり、蟻や蜂も都市的な空間に住むのだ。
洞窟時代の人間に比べれば、そういった動物の方が高度な建築と都市をもっていたともいえる。しかし人間は、その建築と都市を不断に発達させ、今日のように高度で複雑な居住環境を築いてきた。
人類はその生態を変化させる動物なのだ。
人間は、道具を使い、農耕し、定住する。その居住地は、次第に大きくなり、密度が高くなり、宗教建築や宮殿建築が複雑化し、絵と文字と彫刻が現れ、道路が敷かれ、川に橋が架かり、水道が引かれる。やがてガス灯や電灯が灯り、鉄道の駅ができ、自動車が走り、高層化され、情報網が広がっていく。
人類は都市化する動物である。
そしてその都市化の過程に、「都市力」と「風土力」が作用するという考えをもった。
その二つの力が、人間の集団にも個人にも、大きな意味をもつような気がした。