柔道は金メダルが至上命令という。銀や銅のメダルでは悔しいという。
しかし僕は、日本発のスポーツが、これだけ世界的になったことを評価すべきだと思う。他にはないのだ。そう考えれば、他国にメダルをさらわれることを日本人は喜んでいい。個人として負けは不名誉だが、日本文化としては負けてこそ名誉なのだ。
今回は銅メダルが多かった。一度負けてのチャレンジには強い精神力が必要で、井上監督が涙したのは、その選手の気持ちを理解しているからだろう。銀にも銅にも、金に負けないドラマがある。
それにしてもこのスポーツはルールが未熟であることを感じる。
技の出ない試合も多く、明らかに強そうな方が負けになったり、審判によって結果が大きく違ったり、這いつくばっても減点されず、少し有利になると闘いを避ける。
日本柔道連盟は、メダルを独占することより、このスポーツがより魅力的、より合理的なものとして世界に広がることに力を尽くすべきである。それこそが嘉納治五郎の精神であるに違いない。
柔よく剛を制す。
柔とは文化の勝利、剛とは闘いの勝利。