都市力と風土力

建築からの文化論を主に、時事評論を加える。

小池知事と着物の圧倒

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五輪の旗を受け取る式典に、小池知事は着物で現れた。

洋服姿が似合う人なので、僕には意外性があった。雨に濡れて、案外地味、高価そう、といった意見が多いが、さすがに目立つ。

こういったハレの場における日本女性の着物姿には、抜群の存在感がある。どの国の民族衣装も圧倒する力がある。西陣などに培われた技術と芸術の積み重ねは単なる「服」を超えた工芸品であると言ってもいい。

僕は、建築や絵画といったビジュアルな文化の国際的な場において、日本の伝統のそれは、きわめて洗練されたものであるにせよ、簡素で、地味で、小ぶりで、目立たない印象であることに残念な気がすることがある。しかしそこに、着物姿の女性が並ぶと、他国の女性たちを必ず圧倒してしまう。身体の線が出る洋服では見劣りすることもある日本女性の面目躍如だ。外国の女性が着ても、残念ながらあまり似合うとは思えない。

伝統というものだ。

日本の建築文化は、仏教建築をのぞいて、彫刻や壁画に飾られることが少ない。その代わり、簾のひもや、畳のへりにカラフルなものや、海外から来た珍しいものを使う。女性の着物もそれにつながる。一二単(ひとえ)に見るような草木染めの、落ち着いて鮮やかな色彩が、居住環境に華を与える。木の文化であるとともに、布の文化なのだ。

逆に言えば、女性の着物姿を美しく見せるために日本の建築は簡素であるのかもしれない。