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都市力と風土力

建築からの文化論を主に、時事評論を加える。

万葉という大衆発信

日本文学の原点ともいうべき『万葉集』は、天皇や貴族に加えて、防人、東人、農民などの歌を大量に取り込んだ、世界でも珍しい歌集である。しかも、藤原氏を中心に推し進められた、漢字と仏教の外来文明による律令体制への反対感情さえ読みとれる。

僕はこの歌集を、日本の無文字時代の文化を、文字によって書き残そうとしたものと考える。だからこそ漢字という表意の文字を表音の仮名として使ったのだ。『古今和歌集』以後の、貴族階級を中心とする日本文化の正統としての和歌とは異なる、太古へと遡行するような呪術的な力が感じられる。

そして考えてみれば、「万=大衆」「(言の)葉=発信」という意味で、この歌集こそ、日本の大衆発信文化を象徴するものではないか。