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都市力と風土力

建築からの文化論を主に、時事評論を加える。

日本の都市力と風土力

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英語の「civilization(シビライゼーション)」は、本来「都市化」を意味する。

これを「文明」と訳したのは、ヨーロッパと日本との、都市の現実が違いすぎたからではないか。大陸では、都市は城壁に囲まれ、石や煉瓦を積み上げた大きな共同体であるが、日本では燃えやすい木造家屋の集合に過ぎなかった。東京や大阪も長いあいだ「巨大な村」と呼ばれたのだ。

ヨーロッパだけではない。イスラム圏でも、中国でも、都市はすべて城壁で囲まれていたのである。中国では都市を「城市」あるいは「都城」(政治的な権威を有する場合)と呼ぶ。「城」は「土」に「成」であり、土壁の中を意味する。英語の「city(シティ)」もシタデルというラテン語がもとで、これも壁で囲まれた内部を意味する。

つまり都市とは、内部と外部を峻別する壁に囲まれ、その内部は法による秩序が支配する共同的居住地である。「市民」とはこの「壁の内部の人」であり、外部の人とはっきり区別される。ローマやアメリカの「市民権」にも、中国の「城市戸籍」にも、そういった歴史的背景がある。

しかし日本は、都市全体を壁で囲うという発想をもたなかった珍しい文明国で、現在でも領土防衛に定見がないという事実は、そこから来ているのかもしれない。また「市民」という言葉も曖昧に使われている。

そして「都市の囲い」が弱い代わりに「家の囲い」が強力である。国家そのものが言葉のとおり「一つの家」という感覚である。もちろん「天皇」という家長をもつ。

 

そういったこともあって、ユーラシア大陸の最東端に位置するこの島国では、独特の風土力と独特の都市力が現れる。

独特の風土力とは、清冽な山と川と移り変わる四季という自然の中で培われた微妙な感性であり、その社会性において発揮される忍耐と同情と団結の心性である。

独特の都市力とは、木造建築などの伝統の中で培われた精緻な技術力と、海外からやってくる優れた物と技術を速やかに巧みに取り入れ、自国に合うように調整しながら育てていく力である。