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都市力と風土力

建築からの文化論を主に、時事評論を加える。

トランプ現象と政治的性格の二面性

日本のマスコミは、アメリカのメディアに追従してクリントン氏勝利を予測し見事に裏切られた。選挙中はトランプ氏の主張がいかに無茶苦茶であるかを報じていたが、選挙後は打って変わって、彼の現実主義を報じている。

僕も彼の勝利には驚いた。しかし勝っても負けても、彼の支持者は国民の半分近くであり、クリントン氏にも同じことが言えるのだ。つまり勝敗にかかわらず、アメリカの政治意識が二分されているということが重要である

トランプ次期大統領の政策を、端的に表す言葉は何であろう。

右派、タカ派、保守、経済的保護主義、偏見と差別(マイノリティと女性に対する)、アメリカ第一主義、ポピュリズム、といった言葉が浮かぶ。いずれも外れてはいないが、完全にピッタリという感覚ではない。彼は経済人であり、アメリカの軍事的ライバルとなるロシアや中国と敵対しないというから、過激な右派の愛国者ではなく、タカ派でもないようだ。保守であることは確かだろう。保護主義というのはTPPに関してのことで、現実の関税に関しては二国間条約でということだから、まだはっきりしない。偏見と差別の傾向はあるが、これは私的な発言のレベルで、どの程度政策に反映されるかは未知数。アメリカ第一というが、もともとアメリカの世界戦略は正義の警察たる自認からではなく、国益から来ているのだから、アメリカの軍事力が現実にどこまで後退するかも未知数だ。ポピュリズムという批判もどうだろう。世界の民主主義がメディア経由のポピュリズムに堕していることは認めるが、そのメディアが報ずる多数派意見に乗っていたクリントン陣営の方がポピュリズムであったかもしれない。

 

ここで言いたいことは、トランプだけでなく、ロシアのプーチン、フィリピンのドゥテルテ、フランスのサルコジといった政治家にも共通する傾向を、一言で表現する言葉は何かということである。手垢のついた言葉ではピンとこない。

 

人間とその集団の「政治的性格」には、常に二つの側面があるように思える。

一つは、人間はみな平等であり、差別も偏見もない平和な社会を希求する側面であり、人類の普遍的な理想に向かう、すなわち進歩に向かう革新の力でもある。仮にこれをA面としよう。

もう一つは、自己が属する集団の安定と繁栄のために努力するという側面である。この場合の集団には、家族、友人、学校、企業、国家、思想、宗教などが含まれる。集団固有の伝統を重視するので、革新に対する保守とされてきた。仮にこれをB面としよう。

本来、官僚主義も、ジャーナリズムも、知識化すなわち進歩と言う概念に向かう制度で、マスメディアがA面に立脚しようとするのは当然のことだ。それが人間の普遍的な叡智であり、歴史の必然である、と考える向きである。

しかし一方、人間は社会的集団的動物であり、完全に普遍的な個人ではない。その集団の指導者と成員が、その集団の利益のために努力するのも当然のことだ。特に、所属する集団の生活が、他の集団からの攻撃によって脅かされる場合、人間は相当戦闘的になるし、身を呈して戦闘に参加する人間を英雄視する。つまり人間とその集団の営為には常にこのB面の力がはたらいているのである。

A面、B面と言うと、シングル・レコードの表と裏、二つの曲を連想するが、必ずしも無縁ではない。A面の曲は、販売上見込みの高い曲であり、社会的性格が強い。B面の曲は、その歌手が本当に歌いたい曲で、個人的性格が強い。もちろん大抵はA面がヒットするのだが、B面が大ヒットすることもしばしばである。

つまりA面、B面は、表と裏、建前と本音という概念に近いかもしれない。つまりこれは、人間とその集団が二つの陣営にはっきりと分かれるというのではなく、一つの勢力が有する二つの面である。

人間は、個人もまた集団も、A面とB面、二つの政治的性格を有している。