懐かしい名前である。単なる打撃コーチとして、これほど有名になった方も珍しいだろう。
川上哲治氏が監督になった時に懇請したという。
一見、読み過ごしてしまうが、川上といえば、僕らが子どもの頃、長嶋、王が現れる前のスター選手で、「打撃の神様」と呼ばれた人物である。その神様が自分でコーチせずに、他チームからコーチを呼んだのである。自分は監督に専念し、結果としてV9を達成した。
まだ未知数のコーチと打者の組み合わせが、世界的なホームラン記録を生む独特の打法を育てることを予測したなら、まさに神業だ。
打撃の神様は、打撃コーチの神様ではなく、打撃コーチの素質を見抜く神様であった。