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都市力と風土力

建築からの文化論を主に、時事評論を加える。

トランプとメルケル

ドイツのメルケル首相は、トランプ次期大統領の当選を受けて「民主主義、自由、そして出自、肌の色、宗教、性別、性的指向、政治的立場に左右されず、個々人の権威と尊厳に敬意を払うという諸価値の基礎の上で、協力したい」と述べたという。

他国の首脳が、とりあえず祝意と協調の構えであったことを考えれば、かなり厳しい条件であろう。そしてこの声明に、先に述べた政治的性格のA面、民主、自由、非差別、個人の尊厳、といった特質がよく表現されている。

欧州先進国の政治状況がおしなべてB面(右派、保守派、国家主義)化する中で、メルケル首相はA面(左派、進歩派、国際主義)の代表格であるが、縁の深い隣国のオーストリアの大統領選において極右政党支持が半数弱に達し、ドイツもまた右派政党「ドイツのための選択肢」が躍進を続けているのであるから、決して盤石ではない。EU内部の財政危機、宗教の絡んだテロリズム、難民の大量流入といった問題に、その理想主義的な政治信条も追い詰められつつあるのだ。

そしてこの国が右傾化することに、われわれは第二次世界大戦の原因となったナチスの台頭を思い起こさずにはいられない。かつて強烈な民族主義の帝国であり、その後、資本主義圏と社会主義圏とに二分されていていたドイツという国家が、今後、どのような政治傾向を選択するのか、ヨーロッパにとっても、国際社会にとっても、大きな鍵となる。

トランプ次期大統領の登場によって、彼女の姿勢は、孤立に向かいながらも、A面政治家の象徴として、より存在感を強めていくことになる。

今後必要なことは、右派と極右の線引きであるかもしれない。