都市力と風土力

建築からの文化論を主に、時事評論を加える。

電車内劇場その2

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東京の地下鉄、前の席に座った少女が二人、話に夢中になっていた。小学校に入ったばかりぐらいの年齢だ。

「あ、しまった降り忘れた」

と一人が叫んだ。

彼女は次の駅で降りた。僕も同じ駅で降りた。乗り換え客の多い複雑な駅で、僕は戻りのホームまで連れてってあげようかと声をかけた。

「戻るんでしょう」

案の定、彼女は横を向いて僕から離れていった。

帰ったら母親に告げているだろう。

「今日、電車のホームで変なおじさんに声をかけられた」

「そう、絶対に、ついていっちゃダメよ」

彼女の行為は完全に正しい。しかし僕は声をかけたことを後悔していない。

いつのまにかそういう社会になってしまった。日日流れるテレビのニュースを視ていれば当然だろう。

どういうわけか、犯罪の少ない先進国ほど警戒的で、犯罪の多い後進国ほどフレンドリーである。犯罪の問題ではなく、個人で守る社会と仲間で守る社会の違いかもしれない。