都市力と風土力

建築からの文化論を主に、時事評論を加える。

グレートレース・報酬も賞賛もない命がけの挑戦

グレートレースという番組がある。

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酷寒の北極圏、酷暑の砂漠、険しい山、深い森、激しい川、厳しい自然の中を数百キロ、数日間、命がけで走り抜く。自転車も、カヌーもあれば、時にはパラグライダーも登場する。参加者の多くは途中脱落し、ゴールにたどり着く者は少ない。

レースであるから、主催者がそれなりのサポートをして救急医療体制もあるようだが、体力と生命の極限に挑むことはたしかだ。しかもプロスポーツのような報酬もなく、リンドバーグのような賞賛もない。逆に数十万円の参加費を負担しなければならず、目的はただ完走とその達成感なのだ。

かつては、地球上に未知の世界が大きく広がっていて、子供達はその探検と冒険にあこがれ、成功した探検家はそれなりの報酬と賞賛をえた。もっと前は、宝探しの海賊や征服者(コンキスタドール)が跋扈した。

現在は世界の津々浦々にランドサットの目が光り、宇宙と深海の他に「未知」というものがなくなっている。そこで、自然への「挑戦」が組織的にセッティングされはじめた。いわば「探検冒険のゲーム化」であろう。

参加者の年齢は意外に高く、つまりこの挑戦にそれまでの人生が掛かっているのだ。番組としては、参加者の人生観にもう少し食い込めばおもしろいと思うが、やりすぎるとわざとらしくなる。

「なぜ好きこのんで苦しむのか」「もっと有益なことに挑戦しろ」という声もあるが、僕は参加者にエールをおくりたい。

人間とは挑戦するものだ。