バルト三国は、言葉も風土も文化も異なるところが面白い。
端的にいえばエストニアはフィンランドに近く、リトアニアはポーランドに近い。
一番ロシアの影響が残るのがラトビアで、首都リガはソビエト時代モスクワに次ぐ大都市であった。
世界遺産の中央市場や中心街もいいが、住宅地の一角に、ロシアの映画監督セルゲイ・エイゼンシュタインの父親、ミハエル(建築家)の設計によるユーゲント・シュティールの作品が並んでいるのは見ものだ。
ドイツのアール・ヌーヴォーとされるが、むしろ様式主義とゼツェッシオンの中間の感覚だ。ユダヤ系ロシア人ミハエルの作品は少し過剰だが、天才セルゲイを生んだ片鱗を感じる。またその後のロシア・アヴァンギャルドやドイツ表現主義に通ずるものも感じる。ドイツとロシアの敵対的影響関係は、オーストリア、ポーランド、チェコ、フィンランドなども含めて、20世紀初期のモダニズムに、東欧圏の革命的先鋭が大きな役割を果たしたことを想わせる。