稀勢の里がついに引退した。
怪我をしてからはいいところがなかった。
ほとんどの相撲ファンが期待し、応援し、また同情した。
そんな力士はこれまでになかった。初代若乃花も大鵬も大変な人気だったが、強いがゆえの人気で、同情されるということはなかった。北の湖などは強すぎて憎らしいといわれたほどだ。
横綱をモンゴル勢が独占する時代が続いて、日本人横綱誕生が全相撲ファンの悲願だった。そして横綱になった時点から一抹の危惧があった。つまり朝青龍、白鵬、日馬富士、鶴竜というモンゴル人横綱が続いた中に、ただひとり誕生した日本人横綱ゆえのプレッシャーであり、それゆえの引退であった。
もちろんプレッシャーをはねのける心技体が無かったといわれればそれまでだ。
平成時代の相撲界はモンゴル時代であった。そういう時代が生んだ横綱であり引退であった。大相撲史上初めてのことだ。
勝負の世界は非情である。
非情だからいいのだろう。