米大統領選の終盤、俳優のメリル・ストリーブが、クリント・イーストウッドがトランプ氏を支持していることに対して「私が(支持を取り下げるよう)説得する」と発言したと伝えられた。
面白い話だ。
どちらも傑出した映画人である。
メリルは、「クレイマー、クレイマー」「ソフェイの選択」「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」と、アカデミー主演女優賞を三回受賞した演技派。押しも押されぬ大女優である。「マディソン郡の橋」で、クリントと共演している。
クリントは、「ローハイド」のカウボーイ役から始まって、「ダーティ・ハリー」の刑事役など、いかにもアメリカ的な、いざという時には遠慮なくピストルをぶっ放すアクション俳優で、いわば武闘派。しかし彼の演技には、闘う男の詩情と孤独と優しさが滲み出ていた。近年は監督としてもいい映画を作りつづけている。
どちらも高く評価しているが、その評価の質が異なる。上手い俳優と好きな俳優、メリルは頭で、クリントは心で評価していると言ってもいい。
クリントン氏とトランプ氏の対比は、この対比に似ている。先に述べたA面とB面だ。
もちろん人間としては、メリル・ストリーブとヒラリー・クリントンも大きく違うし、クリント・イーストウッドとドナルド・トランプも大きく違う。あくまで対比の問題であり、評価の問題ではない。
つまりこのA面とB面は、現代アメリカ社会の二つの「性格典型」であるかもしれない。