都市力と風土力

建築からの文化論を主に、時事評論を加える。

2017-01-01から1ヶ月間の記事一覧

都市化の暴力

『西部戦線異常なし』という映画は、ドイツの若い志願兵が戦死するまでの、塹壕線における恐怖と苦悩を描いている。 第一次世界大戦においては、歩兵が機関銃の弾幕から隠れる必要があり、塹壕戦とならざるをえない。ナポレオン戦争のような勇壮な歩兵戦、騎…

戦争と「都市力・風土力」

前に、ベトナム戦争で、アメリカはベトナムの「風土」に負けたと書いた。 歴史を振り返ってみると、これに似たことは何回か起きている。 ナポレオンとヒトラーがロシアで失敗したのは、ともに「冬将軍」すなわち厳しい吹雪による。 ナポレオンとその同盟軍は…

言葉と後悔 双子の兄弟

言葉というやつは、頭の中にあるうちは、ぼんやりとして、形も定まらず、現れたり消えたり、きわめて頼りない存在だ。だから建築設計のエスキスのように、描いたり消したり、ああでもないこうでもないと、くんずほぐれつするうちに、少しずつ形になっていく…

政治的性格 A面=都市力 B面=風土力

トランプ現象と政治的性格について論じてきた。重なる部分もあるが、整理しよう。 人間は、他の生物と同様に群をなし、社会的動物でもあり、政治的動物でもある。 人間の集団は、複層的かつ可変的である。集団の最小単位は個人であり、最大単位は人類と考え…

この世界の片隅に

「この世界の片隅に」というアニメーション映画を観た。 素晴らしい作品だ。 戦争や原爆を、庶民の目線で、人生の流れと生活の日常から現象させることによって、その理不尽を描く。それはままあることだが、この作品は、庶民目線が徹底しており、ごく普通の…

大統領就任演説=ポピュリズムよりエゴイズム

トランプ大統領の就任演説は、よく言われるアメリカ主義なのだが、人間とか国家とかの「理念」がまったく感じられないことに少し驚いた。ここまで来ると、ポピュリズムというよりエゴイズムではないか。これでは説得力がないだろう。 人間にも国家にも、政治…

建築家の資質

建築家に必要な資質は何かと問われれば「少しトンがった真心」と答える。 つくることに対する真心であり、それが世間に多少の摩擦を生じる角となる。 あまりもち合わせない有名建築家もいるし、十分にもつ無名の建築家もいる。 真心が無ければ、つくるものに…

文科省と大学・知的腐食

文科省の組織的な天下りが問題になっている。 天下り先は大学である。 国立大学が法人化されてから、大学に対する文科省の力が驚くほど強くなった。そして教授や学部長や学長までが文科省から送られて来る。予算を獲得するために、大学もそれを受け入れる。 …

稀勢の里と日本社会

稀勢の里が優勝したことを日本中が喜んでいる。 本人のインタビューも涙、涙、「ホントに周りが支えてくれました、これからもホントに稽古に励んで、ホントに立派に勤めます」 周囲から精神的な弱さがあると言われ、本人もそれを認めているようだ。 若乃花以…

トランプ現象とアメリカの風土=荒野

大統領就任式を控え、マス・メディアはトランプの人間性と閣僚と政策の分析に忙しい。 しかしそれは徐々に明らかになることだ。それよりもこのトランプ現象が、アメリカを二分している事実について考えたい。 グローバリズムとアメリカニズム(国家第一とい…

壁の文化と屋根の文化

先に「積み上げる文化と組み立てる文化」について書いた。 建築からの文化論としては、分かりやすいキャッチフレーズであったが、「建築へ向かう旅」という本の中で、もう一つ踏み込んでみた。 積み上げる建築は「壁」の建築であり、組み立てる建築は「屋根…

本はページをめくるだけでいい

難しい本、面白くない本、やたらに厚い本など、途中でストップしてしまうことがある。 そのままにしておくと、本に負けたような気になるし、次の本に進みにくい。そういう本は、とにかくページをめくってしまうといい。内容が頭に入らなくても、目が何らかの…

本は後ろから読め

時々、本を後ろから読む。 やってみた人間でないと分からないが、それも一つの読書なのだ。 パラパラと後ろからページをめくる。精読はできないから、スピードが早い。しかも不思議にその本に書いてあることの構造が理解できる。そして重要なところだけ、し…

積み上げる文化・組み立てる文化

四年生のときに大学は紛争となり、バリケード封鎖の中の卒業。そのまま大学院に進んだのだが、設計と研究とどちらの道に進むべきかで大いに迷い、迷いながら哲学や評論を読んだ。すでに両親は亡く姉たちは嫁に行って天涯孤独。 紛争のあとの虚脱感もあったの…

可愛いAI

先に、AIに関する論評が、打ち壊し運動とアシモフの時代の域を出ていないと書いた。 乱数発生と自己学習が生み出す、これまでのプログラムとの違いの本質に触れていないからだ。 乱数発生は、プログラムに偶然を取り込むことであり、これは創造力と想像力に…

政治的性格とは

トランプ現象から、「政治的性格のA面とB面」を語ってきた。 この政治的性格という言葉は、デビッド・リースマンが「孤独な群衆」において使った「社会的性格」に習ったものだ。 リースマンは、経済的テイクオフ(離陸すなわち急速な発展)以前の社会では、…

AI(人工知能)の論評

AI(人工知能)について、様々に論じられているが、もう一つピンとこない。 AIには、人間のような想像力も創造力もない、所詮人間がプログラムしたものだから人間を超えられない、といった意見によって、安心しようとする内容がほとんどだ。 かつて、機械が…

トランプ現象は三極構造

トランプ現象と、インターネットあるいはSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)との関係は、あまり論じられていない。 ロシアがハッキングによって、クリントンのメールを流出させたという報道があるが、これは少し種類が異なる問題だ。 かつて、ケ…

ベトナム戦争と風土力

僕の青春時代は、ベトナム戦争の期間とほぼ同時期であった。 われわれの政治意識の背景には常に、日本の物質的繁栄とベトナムの惨劇が存在したのだ。あの大学紛争というものも、この戦争と密接につながっていた。 第一次世界大戦以来、最大の軍事強国として…

智に働けば角が立つ=深知

智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。 ご存知「草枕」の冒頭、漱石をあまり読まない人でもこの言葉は知っている。人間とその社会を考える上で、やはり名言だと思われる。 これまで政治的性格のA面とB面について書いてきたが、A面はこの「智」に、B面…

スポーツ資本主義=情動資本主義

先に、体育会系は下火と書いたが、スポーツが衰退したわけではない。逆に大いに盛り上がっている。 国際的に見て、サッカー、野球、フットボール(アメフト)、バスケットボール、テニスなどは、大きな集客力と資金力を有し、コマーシャリズム(消費宣伝)と…

体育会系とアマチュア・スポーツ

先のブログで、トランプやプーチンといった政治家(すなわちB面の)を「体育会系」という言葉で表現した。 現在、特定の人気スポーツ(例えばプロになって稼げるような)を除けば、体育会系は下火である。 友人たちが集まって話をすると、それぞれの部活動の…

世界情勢と風土

シリア情勢は混乱終息に向かっているのだろうか。 熱砂の中、黒覆面をした男が、オレンジ色の服を着せられ後ろ手に縛られて座らされた日本人ジャーナリストの首に、キラキラと光るナイフを突きつける映像は、平和慣れした日本人にとって、忘れがたい記憶とな…