都市力と風土力

建築からの文化論を主に、時事評論を加える。

2016-01-01から1年間の記事一覧

トランプ現象はポピュリズムか

欧米でも日本でも、既成のマスメディアは、トランプ氏の勝利と、ヨーロッパの右翼政党の伸長を「ポピュリズム」と位置づけているようだ。 しかし現代のマスコミが、民主主義社会の選挙結果に対してこの言葉を使うことには違和感がある。どうもそのまま素直に…

体育会系の政治家

トランプやプーチンやドゥテルテといった指導者の傾向を、右派、ポピュリズムといった一言で表現するのを避け、とりあえず価値判断を控えて、これを政治的性格のB面とした。 今、ひとつ僕の頭の中にあるのは「体育会系」という言葉である。 高度成長のあと、…

演歌の風土力

よく巷で歌われる「演歌」というものの歌詞を分析したことがある。 そこに登場する地域と都市には、はっきりした偏りがあるのだ。「北」をタイトルとする歌は多く、「南」の歌はほとんど見当たらない。「北へ行く」あるいは「北から来る」という設定で、その…

本と旅

本を読むのは良いことだ。 旅に出るのも良いことだ。 本は内的な旅であり、旅は外的な読書である。 しかしよく考えてみると、こうも言える。 本は、他の人の心に触れるつまり外的な心の旅であり、旅は、自分を発見するつまり内的な心の読書である。

少年の孤独と老人の孤独

少年は孤独だ。 老人も孤独だ。 少年の孤独は老人の孤独より苦しい。 老人の孤独は少年の孤独より哀しい。 少年の孤独には希望があるから。 老人の孤独には記憶があるから。

もっとシンプルに

年金制度が変わるそうだ。健康保険も変わるそうだ。 自分にも関わることだが、理解するのが面倒である。 さまざまな減免制度があるので、税務署は還付手続きが大変だそうだ。一度集めたお金をまた返すのに相当のコスト(公務員の人件費)がかかっている。財…

トランプとメルケル

ドイツのメルケル首相は、トランプ次期大統領の当選を受けて「民主主義、自由、そして出自、肌の色、宗教、性別、性的指向、政治的立場に左右されず、個々人の権威と尊厳に敬意を払うという諸価値の基礎の上で、協力したい」と述べたという。 他国の首脳が、…

トランプとクリント・イーストウッド

米大統領選の終盤、俳優のメリル・ストリーブが、クリント・イーストウッドがトランプ氏を支持していることに対して「私が(支持を取り下げるよう)説得する」と発言したと伝えられた。 面白い話だ。 どちらも傑出した映画人である。 メリルは、「クレイマー…

打撃コーチを見抜く神様

王貞治選手の一本足打法を生んだ荒川博コーチが他界した。 懐かしい名前である。単なる打撃コーチとして、これほど有名になった方も珍しいだろう。 川上哲治氏が監督になった時に懇請したという。 一見、読み過ごしてしまうが、川上といえば、僕らが子どもの…

相手国民の心に響く外交

安倍首相が真珠湾を慰霊訪問するという。 この15日に日露首脳会談が予定されているから「返す刀で」という感がある。この行動力は評価したい。 吉田首相のサンフランシスコ平和条約、田中首相の日中平和友好条約、中曽根首相の国鉄民営化、小泉首相の郵政…

ニュースサイト連載

最近、ヤフーが運営するニュースサイト「ザ・ページ」に「都市化の残像」というタイトルで、連載を始めたので、そちらに力を取られ、ブログ更新回数が減っている。 具体的な建築から文化と社会を論じたもので、そちらも是非読んでいただきたい。 「都市力と…

トランプ現象と政治的性格の二面性

日本のマスコミは、アメリカのメディアに追従してクリントン氏勝利を予測し見事に裏切られた。選挙中はトランプ氏の主張がいかに無茶苦茶であるかを報じていたが、選挙後は打って変わって、彼の現実主義を報じている。 僕も彼の勝利には驚いた。しかし勝って…

立場の重圧

責任ある立場というものは、やりがいもあるが、重圧もある。 いつでも辞められるなら気が楽だ。企業経営者や政治家には、大まかな任期というものがある。 絶対に辞められないとなると、これは苦痛だ。天皇退位には反対の識者が多いという。 辞めると命の危険…

空を切る

真理、真実を書こうと、もがいていたのだが、それは言葉にできないものなのかもしれない。 星の王子様は「本当に大切なものは目に見えない」と言った。同じことだろう。本当に大切なことは、言葉では表現できないのだ。 本質を切ろうとすればするほど空を切…

カストロ・20世紀の英雄

フィデロ・カストロが死んだ。 アメリカとの国交正常化の後であった。 生き延びた英雄であり、生き延びた20世紀人でもある。 キューバ人は哀しみ、アメリカの亡命キューバ人は喜んだ。 一般に、革命のヒーローは政権の座に着くと、それまでの盟友を裏切り…

町内会長型と創業者型

プーチンは、選挙を経ているにせよ、強大な権限をもつ無期限の大統領という印象だ。 ソビエトが崩壊し、民主主義のロシアが誕生してから、独裁者が誕生したのである。 一般的には、選挙によってリーダーを選ぶ民主主義は、独裁者の出現を封じる機能をもつは…

小説

小説というものは、読み手によって、またその時期によって、ずいぶんと「意味」が変わるような気がする。だから、評判のものを読んであまり感動しなくても恥じることはないし、逆に感動したものが評判にならなくても寂しく思うこともない。すぐれて個人的な…

ボブ・ディランは素直だ

ボブ・ディランにノーベル文学賞と聞いて驚いた。 しかし連絡が取れず「受賞拒否か」という報道に、さすが「らしいな」と思っていた。 ところが「とても嬉しい。喜んでいる」とのコメントが出て、「なあんだ普通の人か」と思った。 しかしスケジュールが決ま…

拓郎と直太朗

ノーベル賞はもらえないだろうが、吉田拓郎はいい。 あの時代特有の、主張と、迷いと、諦念がある。 妙にプロテストする歌も、甘い恋愛歌も、甲高い声の気取った歌も、好みに合わない。 拓郎には独特の風物詩がある。そう言えば季節を感じさせる歌が多い。強…

ドナルド勝利は知識人の敗北か

米大統領選にドナルド氏が勝利して、あるテレビのコメンテイターから「自分も含めて知識人の敗北である」という発言が聞かれた。 たしかにこれまで、トランプ氏は、無知と言われ、ホラ吹きと言われ、大衆迎合と言われ、その支持者は、白人の労働者、貧困層、…

TPPと国内紛争国際紛争

「TPPをまとめようとしたとき、アメリカの言いなりになるなと野党に批判された。今度は、アメリカの大統領候補が両方とも反対しているのになぜ日本がと批判される」官房長官は言う。 だからこそ日本がリーダーシップを取るべきだと続けた。 このことは、一国…

マナーが変化

レストランに入って隣の席が近いと、話し声が耳に着く。夢中になって大声で喋る迷惑な人たちもいる。 一方、仕事の打合せなどでコーヒー店にはいっても、周りがシーンとして話ができる雰囲気ではない。図書館に入ったのかと勘違いする。 かつて、喫茶店でよ…

文明は発達、文化は。

韓国の大統領スキャンダルに関する報道は、怒号と罵声、なかなかに激しい。 歴代大統領が就任中または辞任後に親族の汚職などで訴追されているので、「やっぱりこの人もか」という感を拭えない。 一方、中国の総書記は「核心」という言葉で独裁体制を固めて…

風土力の歌集

設計事務所から大学に転じて、何か新しい分野を開拓しようと「文学の中に記述された建築」という研究に取り組んだ。当時流行していた心理実験やアンケートによって建築の意味を探ろうとする研究に疑問をもったからだ。建築の意味は、そういった手法で浮かび…

日本の都市力と風土力

英語の「civilization(シビライゼーション)」は、本来「都市化」を意味する。 これを「文明」と訳したのは、ヨーロッパと日本との、都市の現実が違いすぎたからではないか。大陸では、都市は城壁に囲まれ、石や煉瓦を積み上げた大きな共同体であるが、日本…

平将門と平和復興五輪

ある先輩との酒の上での会話。「猪瀬知事、舛添知事の失脚、新国立競技場の設計やり直し、エンブレムの盗用、与党ではない知事の圧勝、豊洲問題、その他競技場の見直しと・・・直接にも間接にも、このオリンピックには問題がつづきますね」「これだけ続くと…

10月3日

先日、あるドイツ人と話していて、10月3日が、再統一の日としてドイツ最大の記念日となっていることを知った。 アメリカは7月4日、独立記念日である。 フランスは7月14日、革命記念日であり、パリ祭である。 「日本は?」と聞かれ、はて・・・。 2…

ボブ・ディランにノーベル文学賞

「えっ! 文学賞に?・・・ふーん、まあ、なるほどそれもありか」 村上春樹の「風の歌を聴け」にも、ボブ・ディランの「風に吹かれて」の影響はあると思う。どちらも名作だ。 よくデビュー作を超えるのは難しいと言うけど、時代の風が吹いていたのだろう。イ…

アスリートファースト?

僕はスポーツ・ファンだ。 バラエティやらクイズやらはあまり面白くないし、ドラマも嘘っぽい。報道番組さえ信用できないところがある。スポーツには嘘がない。選手たちの努力とファインプレーには文句なく拍手を送りたい。国民の気持ちは、オリンピック・パ…

ノーベル賞と知的崩壊

母校の教授がノーベル賞を受賞、まずはめでたい。 すぐに役立つ研究に資金がまわり、基礎研究がおろそかになって、科学の空洞化が起きているという発言、そのとおりだと思う。 先日、昼食の席上、ある若い科学者と意見が一致した。 「最近の科学研究は、膨大…