都市力と風土力

建築からの文化論を主に、時事評論を加える。

最期の出会い

ある総合病院でソファに座って診断をまっているとき、車椅子に乗った相当に高齢のご婦人と目があった。向こうがニコッとしたので、こちらもニコッとした。息子さんらしい人が車椅子を押していたが、その人もすでに高齢者と言っていい。

 しばらくしてその人の方を向くと、ガクッと身体の力が抜けたように首が後ろに折れていた。息子さんが声をかけるが起きない。看護師さんがやってくる。息子さんが「よく昼寝するのですが」と言いながら、二人で声をかけたり、手をさすったりする。別の看護師さんが脈拍を図る器械をもってくる。医者がくる。そして車椅子を診察室の中に入れたので、この一団は僕の視界から消えた。

やがて息子さんの声が聞こえた。誰かに電話しているらしい。どうやらその老婦人はお亡くなりになったようだ。

だとすれば、彼女が人生の最期に出会った人間は僕だったということになる。

若いころは美人だったかなと思った。

そして、なぜそんなことを考えるのかとも思った。

 

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