都市力と風土力

建築からの文化論を主に、時事評論を加える。

2016-01-01から1年間の記事一覧

地方議会の縮減

ある市役所を設計しているとき、市の担当者から「議会関係のところはどんなに立派につくっても文句が出ませんよ」と言われた。なるほどそのとおりだった。 文化施設の設計で議会説明に同席したこともあり、その後も色々と地方行政に携わってきた。 地方議員…

豊洲とオリンピック

豊洲の問題は、技術的なディテールがハッキリしないと何とも言えないが、コンクリート工学の専門家、特に遮蔽性の権威である知人は「危険性が明確にならないうちにマスコミが騒ぎすぎている」と言う。僕もそう思う。 新国立競技場以来の一連の問題の根底には…

アーノルド・パーマー追悼

あの頃、かの国の芝生は輝いて見えた。 今、二人の大統領候補は輝きを失っている。T氏は「まさか」。C氏は「またか」。 国内は、爆発(テロ?)と抗議(暴動?)。 わが国の、A氏とR氏は、輝いているか。 内憂外患。

相撲という文化

特に好きというわけでもないが、放送があるときは、相撲をつけている。 父が好きだったので、あの色のついた房の下がる神社のような屋根の下、土俵の上の力士たちの光景がテレビ画面に映ると、早死にした父を思い出すのだ。昔から変わらない画面であり、画面…

「シン・ゴジラ」と日本社会・その3−福島との関係

映画「シン・ゴジラ」は、東日本大震災に触れていない。 しかしこの映画に、3・11の地震による津波被害と福島原発が、大いに関わっていることを感じないわけにはいかない。むしろゴジラを使って、3・11を映画化したとさえ言える。 初期のゴジラが呑川…

「シン・ゴジラ」と日本社会・その2ーアメリカとの関係

映画「シン・ゴジラ」には、日本政府と米国との関係が強く現れる。 国家の危機であるから、日米安保を考えれば当然のことだろう。 しかしそこには伏線があるようだ。 2014年のハリウッド映画「GODZILLAゴジラ」である。見終わってイヤな感じが残った。最後に…

「シン・ゴジラ」と日本社会・その1ー崩壊のリアリティ

映画「シン・ゴジラ」を観た。 とても面白かった。 ゴジラを中心とするこれまでの怪獣映画、ハリウッド製の地球危機映画などとはまったく異なるリアリティがある。 これまでは激烈な都市破壊の恐怖感と、危機を救う主人公の英雄的行為に焦点が当てられていた…

熊野の霊力

夏の盛りに、熊野古道を歩いた。 まことに山深い土地だ。巨木の森の中、土と石と苔の匂いに霊力を感じる。 三つの大社に参詣した。もとは修験の地であったが、やがて神仏習合となった。 それにしても平安末期、都の貴族たちの熊野詣は頻繁であった。後白河法…

「法律+習慣+人情」=日本

天皇の生前退位は、現行法体系に大きく関わることかもしれない。しかし国民は好意的に受け止めている。 一方、安倍首相周辺は総裁任期を延ばそうとしている。こちらは自民党の問題だが、日本の将来に大きな影響があるかもしれない。しかしそれほどの政治問題…

遠い他者

人は他者を求める。 絶対の孤独では生きられない。 人は他者を求める。 生活のためというより、コミュニケーションの相手として。 しかし近い他者には不満ができる。「ウザイ」というやつだ。 そこで人は「遠い他者」を求める。 芸術家は、近い他者より遠い…

大衆世論の特質ー大衆発信社会・その4

これまでの「世論」は、知識人・ジャーナリストがリードした。それが近代社会というもので、啓蒙、開明、進歩、発展という、より良き未来への動力であった。 しかしネット社会における「大衆世論」には、そういった方向性がない。 アメーバー(原生生物)の…

昭和一桁のあとのテレビ

大橋巨泉、永六輔がみまかった。 昭和一桁生まれ、野坂昭如に言わせれば「戦後焼跡闇市派」だ。 戦時中は皇国少年であり、戦後は一転してその価値観を否定されたことから、無頼な創造者となった。戦後テレビ文化を創り上げたのは彼らであり、僕たちの世代は…

万葉という大衆発信

日本文学の原点ともいうべき『万葉集』は、天皇や貴族に加えて、防人、東人、農民などの歌を大量に取り込んだ、世界でも珍しい歌集である。しかも、藤原氏を中心に推し進められた、漢字と仏教の外来文明による律令体制への反対感情さえ読みとれる。 僕はこの…

AI(人工知能)は間違える

僕は囲碁が好きで、コンピューター相手に打つことも多い。 長いあいだ、将棋やチェスと比べて囲碁のソフトはお話にならないぐらい弱かった。そこにモンテカルロ法という乱数発生のシミュレーションを使うプログラムが登場して、格段に強くなった。そして今年…

AI(人工知能)審判を望む

特に昨晩の試合を言うのではないが、サッカーの勝敗は審判に左右される。 柔道もそうだ。そういうスポーツは少なくない。 僕はAIの審判を望む。 ボールやユニフォームにチップを入れ、テレビを多用すれば可能だろう。膨大なデータを記憶させ、ディープラーニ…

知識階級の崩壊ー大衆発信社会その3

このところ、社会のオピニオン・リーダーとなる知識人やジャーナリストにお目にかからないような気がする。 情報化社会と言われてからの傾向だ。 本来「情報」とは、慈雨のように「知識」を育てるものだが、集中豪雨のような情報の氾濫は、知識という草木を…

ポケモンゴーよりポケベンゴー

ポケモンゴーというスマホのゲームが大変な人気で、交通事故の死者が出るほどだ。 そばにやっている人がいるので覗いてみるが、あまり面白いとも思えない。 しかし画期的なのは、ゲームの世界とリアルの世界とを融合させたことである。これまでのゲームは、…

大衆とは何かー大衆発信社会・その2

「市民」という言葉は、都市民から来ており、教育され文明化されたという意味を帯びている。ヨーロッパでは、市民革命のあと、貴族に代わって権力を握った都市商工業者すなわちブルジョアジーの意味でもある。日本では政治家によってご都合的に使われ、リベ…

女優の息子

女優の息子が事件を起こした。 この光景にはデジャブ(既視感)がある。女優A、女優Mと思い浮かぶ。 なぜそういうことになるのだろう。その考察はあとまわしにして、次のように思った。 僕は生母が早く死んで、継母に育てられた。何人か母代わりの人もいた。…

大衆発信社会

ブログを始めて、他のブログも見るようになった。 これまで親しんだ活字の文章とはまったく異なる、新しい文章世界が広がっている。面白いものもあり、つまらないものもあり、ためになるものもあり、ならないものもあり、品のあるものもあり、ないものもあり…

空調に関するテレビ番組

今朝の人気テレビ番組で、空調機をつけっぱなしにするのと、こまめにオンオフするのとどちらがエコか、という特集があった。 僕の専門にも近いので、興味をもって視聴したのだが、その中で、空調機を立ち上げたとき初期の温度が高いために消費電力が多くなり…

小池知事と着物の圧倒

五輪の旗を受け取る式典に、小池知事は着物で現れた。 洋服姿が似合う人なので、僕には意外性があった。雨に濡れて、案外地味、高価そう、といった意見が多いが、さすがに目立つ。 こういったハレの場における日本女性の着物姿には、抜群の存在感がある。ど…

負けてこそ名誉

柔道は金メダルが至上命令という。銀や銅のメダルでは悔しいという。 しかし僕は、日本発のスポーツが、これだけ世界的になったことを評価すべきだと思う。他にはないのだ。そう考えれば、他国にメダルをさらわれることを日本人は喜んでいい。個人として負け…

安倍晋三よりマリオだ

よく知られたゲームキャラクターのマリオが、東京の街中から地球の中心に向かって突き進み、その反対側のリオに到達するというCGは、閉会式会場の注目を集めた。 地表に現れたのは、なんと、マリオの着ぐるみを脱いだ安倍首相であった。本物である。日本人は…

生前退位と伊勢神宮

陛下の生前退位の御言葉に、伊勢の遷宮を想った。 二十年ごとの式年遷宮の制度が定められたのは天武帝の代で、持統帝の代が一回目である。その目的を「技術の伝承」と説明する人が多いが、今のように技術が大変化する時代ではない。昔の人はそうは考えなかっ…

吉田沙保里と「一つの家」

http://www.robundo.com/robundo/blog/?p=11268 オリンピック、応援したくなるのは女子の卓球。可愛いのもある。しかし強すぎないのがいいのかもしれない。銅メダルがやっとくらいが応援しがいがある。 負けて偉大さを再認識、吉田沙保里。名古屋のテレビで…

都市力・風土力とは

「都市力と風土力」というのは、このところ考え続けているテーマである。 次のような趣旨。 北極圏のイヌイット(エスキモー)は氷の家に住む。 赤道に近い熱帯雨林の人々は草を編んだ家に住む。 中央アジアの草原の民はテントの家に住む。 ヨーロッパでは煉…

言葉の建築

僕は建築家だ。一般にそう思われている。 しかし文章も書いてきた。建築作品と同じくらい著書がある。内容は主として「建築からの文化論」。 本当の建築には、施主の要望、コストの制限、技術的法的制約など、困難な条件がある。著書の出版にも、それなりの…