映画「シン・ゴジラ」を観た。
とても面白かった。
ゴジラを中心とするこれまでの怪獣映画、ハリウッド製の地球危機映画などとはまったく異なるリアリティがある。
これまでは激烈な都市破壊の恐怖感と、危機を救う主人公の英雄的行為に焦点が当てられていたが、この映画は、日本政府の対応ぶりを、実にリアルなタッチで描いているのだ。
もちろんゴジラは想像の産物だが、総理大臣も、官房長官も、各大臣も、補佐官も、防衛庁も、海上保安庁も、自衛隊も、警察も、消防も、つまり人も組織も正式の官名が使われ、字幕が多すぎて読み切れないほど、まるでドキュメンタリーである。
縦割りの省庁を集めた大勢の会議では紋切り型の発言が繰り返され、御用学者の専門家たちは役に立たず、意思決定とその実行に手間と時間がかかる。危機における日本の中枢の脆弱ぶりが露呈される。
何よりも感心させられたのは、品川、蒲田、川崎、多摩川、東京駅などの街並みが完全にリアルであることだ。僕は建築が専門だが、建物もすべて実在するものにもとづき、その崩壊の仕方も構造力学を理解して撮ったようなリアリティがあった。生物学や原子物理学には門外漢であるが、工学博士としてもそれほどの違和感を感じない。
日本を代表するヒーローの正義感が甘すぎ、アメリカを代表するヒロインの人品が軽すぎるのが気になったが、これは役者のせいではなく、映画の物語のつくりであり、ヒーロー、ヒロインというものの属性でもあろう。
そして次の二点でも、優れた映画だと思ったのは、アメリカとの関係と、福島原発との関係である。これは次の話題にまわしたい。