カイロ空港に向かうとき、ギザの三つのピラミッドを上空から眺めた。下から見上げるよりも美しいと思った。人類という知的生物の存在証明としての大地への刻印だ。
古代人は、未来の旅人に見られることを予想していたのか。あるいは神に見られることを。いやそれは、茫漠とした「遠い他者」に対する語りかけであったのではないか。
人は他者を求める。
しかし近い他者には雑念が伴う。遠い他者に向かう方がいい。
それは時に神であったり、仏であったり、観音であったりするだろう。あるいは先だった妻であったり、夫であったり、親であったり、子であったり、恋人であったり、親友であったりするだろう。
遠い他者に語れ